「腸内環境を整えましょう」
最近では、かなりよく聞く言葉になりました。
ヨーグルトや乳酸菌、食物繊維、発酵食品などを意識している方も多いと思います。
では、漢方でも「腸内環境を整える」という考え方をするのでしょうか?
実は、漢方にはもともと「腸内環境」という考え方はありません。
腸内フローラや善玉菌・悪玉菌といった、腸内細菌を見る考え方がなかったからです。
では昔の人は、胃腸の調子をどう見ていたのでしょうか?
現代は「腸の中」を見る。漢方は「胃腸の働き」を見る
現代では、腸の中にどのような細菌がいるのか、どのような物質を作っているのかなど、腸内細菌についてさまざまな研究が進んでいます。
一方、漢方では腸内細菌そのものを見るのではなく、
食べたものをきちんと受け入れ、消化し、必要なものを取り込み、不要なものを排泄できているか、という胃腸の働きを見ていきます。
そのため、便通だけを確認するわけではありません。
たとえば、
・食欲はあるか
・胃もたれはないか
・お腹が張らないか
・食後に眠くならないか
・便は硬いか、ゆるいか
・疲れやすくないか
・冷えやむくみはないか
・ストレスで胃腸の調子が変わらないか
など、体全体の様子も一緒に見ていきます。
漢方では、腸だけを切り離すのではなく、その人の体の中で胃腸がどう働いているかを見るわけです。
「腸に良いもの」を足せばいいとは限りません
腸活というと、
「食物繊維を増やそう」
「発酵食品を食べよう」
「乳酸菌を摂ろう」
と、何かをプラスすることに目が向きやすいと思います。
もちろん、それが合う方もいます。
でも、もともと胃が重い、お腹が張る、食べたものが残る感じがする、便が不安定、といった状態なら、ただ何かを足せばいいとは限りません。
漢方ではそんなとき、「今の胃腸は、食べたものをきちんと処理できているのか?」というところから考えます。
場合によっては、何かを補うことよりも、まず胃腸の働きを整えることを優先します。
「腸内環境が悪い=脾虚」ではありません
現代医学の「腸内環境」と、漢方の「脾胃」「痰湿」「食積」などは、同じものではありません。
たとえば、
「腸内環境が悪いから脾虚」
「悪玉菌が多いから痰湿」
と、そのまま置き換えることはできません。
現代医学と漢方では、そもそも体を見る物差しが違うからです。
現代では腸の中を細かく調べることができるようになりました。
漢方では、便通だけでなく、食欲、胃もたれ、疲れ、冷え、むくみ、ストレスなど、体全体に現れているサインから胃腸の状態を考えてきました。
どちらが正しい、という話ではありません。
胃腸を違う角度から見ている、と考えると分かりやすいと思います。
腸だけではなく、その人全体を見る
「腸内環境を整えたい」と考えることは、食生活を見直す良いきっかけになります。
ただ、お腹の調子が悪いときには、
「何を食べれば腸に良いか」だけではなく、
今、自分の胃腸はきちんと働いているのか。
という視点も持ってみると、また違った見方ができます。
腸の中を見る現代の「腸内環境」。
胃腸の働きを体全体から見る漢方。
同じお腹のことを考えていても、見ている場所は少し違います。



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